そもそも、糖尿病の治療法とは?
血糖値のコントロール目標とは?
一般的に、血糖値のコントロールにおいて最も重要な指標が、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)となります。このHbA1cの値が正常範囲内か、正常値外であるかをみて、医師・看護師・管理栄養士で治療方針を検討し、患者さんにあった適切な栄養指導を実施して血糖値コントロールに貢献していきます。
血糖値コントロールの目標
目標 | 血糖正常化を目指す際の目標 | 合併症予防のための目標 | 治療強化が困難な際の目標 |
---|---|---|---|
HbA1c値 | 6.0%未満 | 7.0%未満 | 8.0%未満 |
糖尿病治療の目標は、患者さんの年齢、HbA1c値の異常がみられる期間(罹病期間)、臓器障害、低血糖のリスク、家庭状況などの要素をみて患者さんごとで個別に設定していきます。この血糖値コントロールの目標に関しては「日本糖尿病学会編・著:糖尿病治療ガイド2020-2021」より抜粋しています。
糖尿病治療における食事指導とは?
糖尿病治療時の食事療法では、食事の際に摂取するカロリー量を減らすだけでなく、栄養バランスを心がけることも大切となります。栄養バランスの良い食事習慣を取り組んでいただければ、特に食事制限を行うことはありません。糖尿病治療での食事指導で大切となるのが、正しい食事習慣を継続することです。
糖尿病治療の食事指導を行う際は、まずは身長から適正の摂取カロリー量を導き出します。その結果より、朝食・昼食・夜ご飯でバランスよく摂取できるよう、栄養素・献立を検討していきます。また、普段の生活習慣もヒアリングし、オフィス勤めの場合はお勧めのコンビニ食など、皆様のライフスタイルにあわせて食事指導を行います。
適正の摂取エネルギー量の計算式について
以下の計算式で標準体重を求めます。
標準体重(㎏) = 身長( )m × 身長( )m × 22
※180センチメートルの方は1.8メートルとメートル換算で計算します
標準体重が分かりましたら身体活動量と掛け算してエネルギー摂取量を求めます。
エネルギー摂取量(Kcal) = 標準体重(Kg) × 身体活動量(Kcal)
※身体活動量は下記の表を参考にしてください。
デスクワーク中心の仕事や主婦の方など | 25~30Kcal |
---|---|
立ち仕事が多い仕事の方など | 30~35Kcal |
力仕事が多い仕事の方など | 35Kcal~ |
例えばですが、身長180センチメートルでデスクワーク中心の仕事に勤めている方の場合は一日のエネルギー摂取量は以下となります。
標準体重:1.8×1.8×22=71.28kg
エネルギー摂取量:71.28×25=1,782Kcal
適正摂取エネルギー量は1,782Kcalになりますが、ご高齢の方の場合は筋肉量を落とさないために摂取エネルギー量が増えることもあります。ご高齢の方の場合は診察時に医師や看護師・管理栄養士とご相談していただければと思います。
食事療法のポイントについて
食事療法では「よく噛んで食べる」「満腹ではなく、腹八分目を意識する」「ゆっくりと食べる」などのちょっとした心がけも大切となりますが、食べる順番も意識するだけで効果が得られます。食事の際に、以下のような項目を意識していただければと思います。
- まず野菜から食べ始めます。野菜から摂取することで糖分の吸収が緩やかになります
- 次に汁物を食べてください。汁物を食べることで満腹感が増し、食べ過ぎ防止に繋がります
- 次に肉や魚などの主菜を食べてください。身体にとって必要になるたんぱく質を摂取します
- 最後にご飯を食べてください。炭水化物は最後に食べることで、血糖値の急激な上昇を防ぐことに繋がります
食事療法の注意点について
糖尿病の合併症治療を受けている方は、合併症治療も含めた食事療法が必要です。食事療法においては上述している内容が基本となりますが、合併症によっては摂取カロリー量や栄養素が制限されることもあります。
脂質異常症(高脂血症)の治療を受けている場合
脂質異常症の治療も受けている方はエネルギー摂取量を減らし、飽和脂肪酸、ショ糖(砂糖)・果糖の摂取量は減らすようにしてください。また、コレステロールが1日300mgを超えないようにマヨネーズや揚げ物などの食べ過ぎには注意が必要です。
高血圧の治療を受けている場合
高血圧(血圧が高い)の治療を受けている方は摂取する塩分量を減らしてください。摂取塩分量は1日6g未満を目指してください。塩気の多い食べ物は極力控えるようにしてください。
腎臓の治療を受けている場合
腎臓病(糖尿病腎症など)の治療を受けている方は腎臓機能が低下しているため、タンパク質の摂取量を減らすようにしてください。
糖尿病治療における運動療法とは?
運動の種類について
運動には、短距離走や筋トレのような無酸素運動と、ウォーキング・ジョギング・水泳のような有酸素運動に分けられます。アスリート選手のように無酸素運動を継続する必要はなく、有酸素運動を習慣づけて取り組むようにしてください。
効果的な有酸素運動について
糖尿病治療における運動では、1回30分程度でも構いません。1回30分程度で構いませんので、週3回程度を継続するようにしてください。身体に負担が無く、そして楽しくできる運動を普段の皆さんの生活に取り入れていただければと思います。有酸素運動の例として当院の栄養指導の際に下記のような運動を提案しています。
- ウォーキング
- サイクリング
- 水泳
- ジョギング
- ラジオ体操
- ヨガ、ピラティス
また、普段はお仕事や家事・育児でなかなか運動する時間が取れない方は、エレベーターを使わずに階段を利用することや、通勤の際に1つ前の駅で降りて歩いたりと、何とかして身体を動かすことを意識していただければと思います。
運動療法の注意点について
経口血糖降下薬を内服している方やインスリン療法を受けている方は、運動中に低血糖を引き起こす場合もあります。ご自身が処方されているお薬で低血糖リスクが高いかどうかは医師に事前に確認しておく必要があります。
インスリン治療を受けている方の場合は、運動量にもよりますが適宜運動前にインスリン摂取量を減量しておくことも大切です。また、運動する時間帯は、低血糖が生じるリスクが低い食後に行っていただければと思います。運動療法が禁止、または制限される場合は以下の条件となります。
- 血糖値のコントロールが悪い
- 眼底出血がみられる
- 腎不全
- 心肺機能に障害がある
- 骨・関節に障害がある
- 糖尿病による自律神経障害がみられる
当院の栄養指導について
当院では単に血糖値を下げるお薬を処方して経過をみていく治療スタイルではなく、患者さんお一人おひとりにあった医療を提供するために医師・看護師・管理栄養士が連携して治療方針を検討しています。
当院の栄養指導ではお忙しい方でも受診できるように土曜日や午後診療中でも栄養指導を実施しています。ご希望の方はお気軽にお問い合わせください。