糖尿病とは
糖尿病は、血中に含まれるブドウ糖が多い高血糖の状態が続く病気です。生活習慣病である糖尿病の場合、インスリンが不足する、あるいはインスリンが十分な効果を発揮できなくなって高血糖が続き、全身のタンパク質を「糖化」させます。また、インスリンが効きにくくなった場合には、過剰なインスリンが分泌される高インスリン血症を起こし、高血圧などにつながります。
糖尿病は高血糖で血管に大きな負担をかけ続けて動脈硬化を進行させ、脳卒中や心筋梗塞などの重大な疾患を起こすリスクを上昇させます。また、糖尿病にはいくつか注意が必要な合併症があり、失明、足の壊疽や切断、透析が必要になる腎疾患などを起こす可能性もあります。
増加している糖尿病罹患者数
日本の糖尿病人口は1000万人を超えていると考えられています。2016年に行われた国民健康・栄養調査では、糖尿病が強く疑われるHbA1c6.5%以上の方が国民全体の12.1%(男性の16.3%、女性の9.3%)を占めているとされていて、糖尿病罹患者は増加傾向にあることがわかっています。
糖尿病の検査と治療
初期症状に乏しいため、進行してから気付くケースが少なくないのですが、早期に発見できれば心身への負担が少ない治療で進行を抑えることができます。健康診断などで糖尿病が疑われる場合には、早めにご相談ください。
当院では、患者様ができるだけストレスなく血糖値のコントロールができるよう、状態やライフスタイル、お考えに合わせて治療方針の決定や生活習慣改善のアドバイスを行っています。地道に続けていくことが重要ですから、なんでも気兼ねなくご相談ください。
検査
糖尿病は健康診断で指摘されて受診するケースが多いのですが、楽な治療が可能な早期発見は尿検査だけでは難しいため定期的な血液検査が重要です。特に糖尿病リスクが高い状態の境界型糖尿病発見には血液検査が不可欠です。境界型糖尿病は動脈硬化性疾患の発症リスクが上昇します。肥満があったり、高血圧・脂質異常症を合併しているメタボリックシンドロームでは特に動脈硬化を進行させやすいため、適切な治療が不可欠です。
血液検査で空腹時の血糖値が126mg/dl以上、または食後血糖値が140mg/dl以上で糖尿病が疑われます。この場合、糖尿病の典型的な症状があるか、再検査でも高い数値が出ると糖尿病と診断されます。
また、境界型糖尿病や初期の糖尿病の診断には経口ブドウ糖負荷試験を行います。この検査で180mg/dl以上の場合、将来糖尿病になるリスクが高いと言えます。
また、糖尿病と診断された場合も適切な治療に加えて定期的な検査が不可欠です。また、失明を避けるために眼科医を受診して定期的な眼底検査も必ず受けるようにしてください。
血糖値の平均的な動きを調べる検査
血糖値は食事や運動などの影響を受けて絶えず変動します。そのため、血糖値検査1回だけでは正確な診断ができません。当院では、血糖値の平均的な動きを調べるため、ヘモグロビンA1c(HbA1c)分析装置と血中グルコース測定装置を用いた検査を行っています。ヘモグロビンA1c(HbA1c)分析装置では食事や運動などに左右されない過去1~2ヶ月の平均的な血糖値を調べることができます。
HbA1c分析装置
血中のHbA1cを分析する装置です。
血中グルコース測定装置
血液中のグルコース(血糖)を数分で分析して結果を表示します。
治療
糖尿病は1型糖尿病と2型糖尿病に大きく分けることができます。生活習慣病による糖尿病は2型です。
1型糖尿病
膵臓のβ細胞が壊れて、インスリンがほとんど分泌できなくなっています。インスリンを注射で補う治療が必要です。頻回注射法という即効型インスリンと持続型インスリンを組み合わせた治療を行い、自己血糖測定も並行して行うことも多くなっています。
2型糖尿病
主に肥満や生活習慣などによって発症する糖尿病です。インスリンが出にくいインスリン分泌不全やインスリンが効きにくいインスリン抵抗性によって発症します。
治療では、食事療法と運動療法が重要です。カロリー制限は年齢や性別、体重、ライフスタイルなどに合わせて行いますが、必要な栄養素を十分に摂取できるようバランスを考慮することも大切です。習慣的な運動は、筋肉への血流を増やすためブドウ糖が細胞に取り込まれやすくなって血糖値を下げる効果が期待できます。また、持続した運動によって筋肉が強化されると基礎代謝が上がりますし、インスリンの効果も出やすくなります。ただし、運動をやめてしまうと効果がなくなってしまうため、数日おき程度のペースで運動を続けるようにしてください。なお、呼吸器疾患や高尿酸血症があるなどの場合、適切な運動の内容がかなり変わってきますので、必ず医師の指導を受けてから行うようにしましょう。
薬物療法では、作用や効力、服用のタイミングなどが異なるものを組み合わせて、患者様に最適な処方を行うようにしています。ライフスタイルやご希望をうかがっていきますので、気になることがありましたら遠慮なくご相談ください。
文責:保土ヶ谷あだちクリニック 院長 足立清太郎